takumi296's diary

技術士・匠習作の考へるヒント

美術・文学等など

エッシャーの滝

オランダの版画家、エッシャーに永久機関を彷彿させる作品があります。 閉じた水路を滝が循環して流れる不思議な「だまし絵」です。水は高低差があるからこそ流れ落ちます。滝が水路を1周して元の位置に戻るはずはありません。戻るはずはないのですが、この…

森鴎外も読もう-阿部一族

やっと、鴎外の最高作品まで来ました。文学の話はこれで当分止めます。実は、現在技術士試験対策の本を執筆中でして、ブログ以外では技術の話をずっと書いています。そのため、ブログの方では別の話題になってしまいました。言ってみれば気分転換と言うか気…

森鴎外も読もう-高瀬舟

森鴎外の「高瀬舟」は、大正5年(1916年)1月、「中央公論」に発表された短編小説です。今で言う「安楽死」をテーマにしした小説であると言われています。と言うよりも確かに弟の自殺を助けたことがテーマになっています。 あらすじ 高瀬舟は京都の高瀬川を…

森鴎外も読もう-最後の一句

「最後の一句」は、大正4年(1915年)に雑誌「中央公論」へ発表された作品です。鴎外の歴史小説は、比較的長い「阿部一族」を別にして短いものばかりです。私の持っている筑摩書房の全集は上下2段組みになっていますが、それで9ページです。恐らく、文庫本で…

森鴎外も読もう-かのように

「かのように」は、明治44年(1912年)1月に雑誌中央公論へ掲載されました。当時の鴎外は、まだ本格的に歴史小説を書き始めていませんでした。「かのように」は、ちくま文庫の全集なら第3巻、新潮文庫なら「阿部一族、舞姫」の中に収録されています。文庫本…

森鴎外も読もう-舞姫

森鴎外は、文久2年(1862)生まれ、夏目漱石は慶応3年(1867)生まれですから5歳年上です。しかし、「舞姫」の発表は明治23年(1890)鴎外27歳の時であり、明治38年(1905)38歳で「吾輩は猫である」を発表した漱石よりもだいぶ早熟です。しかも、鴎外は軍医…

漱石を読もう-明暗

夏目漱石は、最終回です。私の独断で選んだ漱石文学の最高作は、「明暗」です。 「三四郎」を最高とするか、「明暗」を最高とするかは迷いました。まして、「明暗」は、絶筆となっていますから未完成です。実際のところ、最後が詰まらない作品になるかもしれ…

漱石を読もう-三四郎

春風の爽やかさ・夏目漱石「三四郎」 「三四郎」は、夏目漱石の長編小説中屈指の小説です。「朝日新聞」には、明治41年(1908年)9月1日から、12月29日にかけて連載されました。全13章からなります。また、翌年5月には春陽堂から単行本として刊行されました…

漱石を読もう-吾輩は猫である

すみません、最初に書いたとき題名を間違えていたようです。「わがはい」は、「我輩」と書くのは間違いです。「吾輩」と書くのが正しく、「ねこ」は「猫」が正解です。従って、夏目漱石が書いた小説の題名は「吾輩は猫である」が正しい題名です。 「吾輩は猫…

漱石を読もう-坊つちゃん

昔の学園ドラマは、坊つちゃんが原型でした。 村野武範さん、中村雅俊さんのドラマです。熱血教師、マドンナ代わりの女教師、小狡い教頭とその腰巾着(赤シャツと野だいこ)、悪戯好きの生徒達。 どこで読んだか忘れましたが、漱石の文庫本で一番売れている…

夏目漱石を読もう-行人(こうじん)

「彼岸過迄」が「朝日新聞」で連載完結したのは、明治45年4月29日でした。漱石は続いて同年の大正元年の12月6日から翌大正2年年11月15日にわたって「行人」の連載を開始しました(明治45年は、7月30日に大正元年となります)。途中、激石が三度目の胃潰傷で…

夏目漱石を読もう

日本人の小説家の中では一番好きな作家です。明治から戦前までの小説家で、その作品を全て文庫本で読めるのは漱石だけだと思います。今でも人気があるからでしょう。 私が漱石と出会ったのは、中学時代の教科書に部分的に載っていた「坊っちゃん」でした。で…

やはり、今の私には『失われた時をもとめて』は長すぎました

もう一度、読み直そうと思ったのですが挫折しました。私も、小説と同じように回想しながらこれを書きます。 「長いこと私は、早くから床についた。時には、ろうそくが消えるとすぐ目が閉じてしまって、ほら眠るぞ、と思うひまもないほどだった。そして、半時…

死後5年掛けて完成、400万字の超大作『失われた時をもとめて』

『失われた時を求めて』(1913-27)は、14年掛(実際は9年)の超大作です。 私が持っている本は、筑摩文庫の『失われた時を求めて』全10巻-井上 究一郎訳です。それと、『ジャン クリストフ』と違ってこちらの本は、誰にでもお勧めできるという訳ではありませ…

大河小説の語源は、どうも『ジャン クリストフ』にあるらしい

ロマン ロランは、『ジャン クリストフ』の中で何度となくライン川を描写しています。この小説は、まさに時が流れるに連れジャン クリストフが成長し、人生の苦悩と戦いながら一流の音楽家(作曲家)へと成長して行く様子が描かれています。ライン川は、ドイ…

20世紀タイプの大河小説「ジャン クリストフ」

私が持っているのは、岩波文庫-豊島与志雄訳(全4巻)です。 ジャン=クリストフJean-Christophe (1904-12)8年掛けて完成しています。 第1部「あけぼの」 ライン河中流にあるドイツの小都会に生まれたジャン クリストフ・クラフトの祖父は,アントワープ出身…

レ ミゼラブル:良き人バルジャンと正しい人ジャベールの葛藤-まとめ

『レ ミゼラブル』(Les Misérables)は、ヴィクトル ユゴーが1862年に執筆したロマン主義フランス文学の大河小説です。原題『 Les Misérables 』 は、「悲惨な人々」「哀れな人々」を意味します。1個のパンを盗んだために19年間もの監獄生活を送ることにな…

レ ミゼラブル:良き人バルジャンと正しい人ジャベールの葛藤-3

第4部「プリュメ通りの牧歌とサン ドニ通りの叙事詩」 ブルボン王家を倒した1830年の革命がブルジョワジーによって中途半端にされ,王族のオルレアン家のルイ=フィリップを王座につけたにすぎないことが、当時の世相の分析を通じて示されます。前回も触れま…

レ ミゼラブル:良き人バルジャンと正しい人ジャベールの葛藤-2

第2部「コゼット」 1815年6月18日のワーテルローの会戦の話が長く続きます。細部にわたる回顧があったり、モンフェルメイユの宿屋の主人テナルディエ(コゼットの養父)の話があったりです。テナルディエは戦死者の金品を奪うならず者でした。しかし、死んだ…

レ ミゼラブル:良き人バルジャンと正しい人ジャベールの葛藤

レ ミゼラブルは、映画も舞台も大ヒットでしたからあらすじは、ご存知の方も多いでしょう。しかし、映画も舞台も大長編の小説を普通の人が観られる時間(3時間以内)にまとめるために、カットされているところも多くあります。とくに、ジャン バルジャンが、…

失われた時は見つかったのか・マルセル プルースト

マルセル プルースト(1871年7月10日~1922年11月18日・51歳で亡くなっています)の本当の名前は、ヴァランタン=ルイ=ジョルジュ=ウジェーヌ=マルセル プルーストです。日本の「寿限無」には負けますが何とも長い名前ですね。ご本人のサインは、何時もマ…

魂の作家・ロマン ロラン

ロマン・ロラン(Romain Rolland:1866年~1944年)は、フランスの、理想主義的ヒューマニズム - 平和主義 - 反ファシズムの作家です。戦争反対を世界に叫び続け、フランス国内よりも海外で多くの支持を受けています。 ロランの代表作は「ジャン クリストフ…

ロマン派の巨匠: ヴイクトル ユゴー

昨日は、フランス文学の衰退と書きましたが、文学全体が衰退している訳でその中でもフランス文学はかつての全盛時代と比較すると特に魅力が無くなったと言えるでしょう。 先ず、3人の作家、ユゴー、ロラン、プルーストを三日に分けてご紹介します。その後、…

衰退するフランス文学

「本当の発見の旅とは、新しい風景を探すことではなく、新しい物の見方を得ることだ。」 フランス文学は、サルトル、カミュの全盛期を最後に1970年頃から衰退しています。 私は、工業化学科の学生だったくせに、フランス文学の大長編小説が大好きでした。上…

ムーミンの仲間孤独を愛するスナフキン

昨日に続きます。こんどはスナフキンと言うムーミン登場人物?の中で常に人気1位になる名物キャラクターの台詞です。スナフキンは自由と孤独、音楽を愛する旅人です。物事を所有することを嫌い執着心を嫌っています。冬の来る前に南へ旅立ち、春の訪れととも…

ムーミンの仲間ミイ

突然、へんな話で恐縮ですが、皆さん「ムーミン」て知ってますか? 私は、子供の頃からあまりテレビを見ない方だったので、「昔、テレビでアニメを放送していたな」ぐらいしか記憶がありません。 ムーミンは、フィンランドの作家トーベ・ヤンソンの『ムーミ…

小林秀雄から柳田國男

分野は全く異なるのですが、若い頃(20代前半の頃)柳田國男(1875年(明治8年)7月31日 - 1962年(昭和37年)8月8日)の本を読み耽ったことがありました。もちろん、文藝評論家小林秀雄の影響です。現在、ちくま文庫の柳田國男全集はPDFとなって私のパソコ…

浄瑠璃作家・鷲見房子

隙間時間を使って書いていたが、何とか書き終えた。今回は文学のお話し。 鷲見房子さんと言っても今では、知る人もあまりいないと思う。インターネットで調べたが、お亡くなりになった年を調べられなかった。100歳近いご年齢で10年くらい前に亡くなられたは…

本日は、息災の日

特に災害は無かった日なので、少しだけ。 私は、小学生の頃からシャーロック・ホームズのファンだった。 そのため、以前は「日本シャーロック・ホームズクラブ」の会員だったが、この数年は退会して離れていた。しかし、離れてしまうと寂しいものである。そ…

小林秀雄・「私の人生觀」

明日の4月13日は、アポロ13号の事故日だが、12日は特に書くべき事故はない、そのため、心に移りゆくよしなしごとを、そこはかとなく書いてみる。 sos_jpさんのブログに、「天職」と言う言葉があったので過剰に反応。 昨今、「てんしょく」と言えば、それは「…